【今週の改善メトリクス】業務改善の目標達成率はわずか19.5%——「棚卸し」を後回しにする中小企業の共通点
業務改善に取り組んだ中小企業200社のうち、目標を達成できたのはわずか19.5%——残り8割は「棚卸し」でつまずいていた。
`【経営層向け】`
このブログを読むとわかること・できること
- 業務改善が8割の企業で失敗している本当の原因(調査データつき)
- 「棚卸し(現状把握)」を3ステップで数値化する具体的なやり方
- 自社の改善の遅れが、年間いくらの損失に相当するかの試算方法
担当ライター: ヒロ(見える化のヒロ)
投稿曜日: 月曜日
参照元: スタディスト「300名未満の中小企業における業務改善の実態調査」(2026年6月、N=200)、中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」(N=1,000社)
スタディストが2026年6月24日〜25日に実施した「300名未満の中小企業における業務改善の実態調査」(N=200、業務改善に携わった経験がある担当者が対象)によると、業務改善の取り組みで「目標以上の成果が出た」(1.5%)または「おおむね目標通り」(18.0%)と回答した企業は、合計しても(19.5%)にとどまった。残る8割は「目標の半分程度」(46.0%)、「ほとんど成果なし」(26.5%)、「途中で止まった」(8.0%)のいずれかに分類されている。
改善が失敗した理由は様々あるはずだが、同調査で目を引くのは「棚卸し」の扱いだ。業務内容を明確に分けて整理できた企業はわずか(9.0%)にとどまり、整理作業に割いた時間が全体の2割以下だった企業は(71.0%)に達した。現状を測る前段階でつまずいている企業が、7割を超えている。
で、あなたの会社は「今、何にどれだけ時間を使っているか」を数字で答えられますか。
◆ 数字で確認する
先の調査が示すのは「改善を始めたのに測れていない」企業の姿だが、そもそも改善に着手できていない企業はさらに多い。中小企業基盤整備機構が2024年10月29日〜11月5日に実施した「中小企業のDX推進に関する調査」(N=1,000社)では、「既に取り組んでいる」「取り組みを検討している」を合わせた割合は(42.0%)で、前回調査(2023年8月)の(31.2%)から(10.8ポイント)増加した。
ただしこの数字を従業員規模別に見ると差が大きい。101人以上の企業では(71.9%)が着手・検討済みである一方、20人以下の企業では(25.4%)にとどまる。OmoshiroIncが向き合っている10〜100名規模の会社の中でも、規模が小さいほど「測る土俵」にすら立てていない企業が多いことになる。
一方で、DXに取り組んだ企業のうち「成果が出ている」「ある程度成果が出ている」と回答した割合は(81.6%)で、前回から(4.9ポイント)伸びている。着手すれば8割が手応えを得ている——つまりボトルネックは「効果が出るかどうか」ではなく「着手して測り始めるかどうか」にある。
(余談だが、前職の工場では「棚卸しは年2回・丸1日がかり」が当たり前だった。ある年、係長が「毎日終業前の5分で自分の持ち場だけ数える」方式に変えたところ、年2回の丸1日作業がほぼ不要になった。測定頻度を上げると、測定そのものにかかる時間はむしろ減る——これは今でもよく聞かれて、うまく説明できない現象のひとつだ。)
◆ 今週試すメトリクス:3ステップで「棚卸し」を数値にする
ステップ1:測定対象を1つだけ決める
「時間の使い方が曖昧な業務」を1つ選び、その業務に関連する「所要時間」「件数」「差し戻し回数」のいずれかを測定対象に設定する。例:
- 見積もり作成:問い合わせから提出までの所要時間(時間)
- 在庫確認:棚卸しにかかる時間(分/回)
- 社内資料の共有:作成から関係者への展開までの日数
対象は「1業務・1指標」に絞る。複数を同時に測ろうとすると記録コストが増え、9.0%の企業が陥った「整理できないまま止まる」状態になりやすい。
ステップ2:Excelで記録シートを作る(5分で完成)
Google スプレッドシートまたは Excel で以下の4列を用意する。
日付 | 担当者 | 指標値 | メモ |
2026/09/21 | 佐藤 | 45分 | 資料の再作成が発生 |
記録は「発生の都度」が理想だが、週1回のまとめ入力でも構わない。まずは記録が途切れないことを優先し、精度は2週目以降に上げていく。
ステップ3:評価基準を数値で決める
測定を始める前に「何が改善か」を数値で定義しておく。定義のないメトリクスは、達成したかどうかを判定できない。
設定の例:
見積もり作成:現状(平均3日)→目標(1.5日以内)を4週間以内に達成
棚卸し時間:現状(月1回90分)→目標(45分以内)を3か月以内に達成
目標値が決められないうちは、数値を仮置きせず「まず2週間測ってから決める」でよい。ベースラインが出た時点で、その2〜3割減を目標にするのが無理のない設定だ。スタディスト調査の平均達成率(19.5%)は、いわば全国平均のハードル——ここを超えられたら、少なくとも「平均よりは測れている」と言える。
◆ 改善量の試算
「棚卸しにかかる時間(現状:月1回90分)」を測定対象にした場合で計算する。
- 現状:月1回・90分
- 目標:月1回・45分(45分の短縮)
- 年間換算:45分 × 12回 = 540分(9時間)
棚卸しを担当する社員の時給を2,000円と仮定すると、年間の削減額は(9時間 × 2,000円 = 18,000円)になる。1つの業務・1人分でこの規模なら、対象を広げれば効果は積み上がっていく。
18,000円という金額そのものに驚きは無い。重要なのは、この数字が「棚卸しを見直すべきかどうか」の議論を、感覚論から金額の比較に変えることだ。目標達成率19.5%という調査結果の裏側には、こうした「測っていれば見えたはずの差」が積み重なっている。
測れば、変わります。
*次週月曜日も改善メトリクスをお届けします。*
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ライタープロフィール
!ヒロ
見える化のヒロ(データアナリスト)
「測れないものは改善できない」が口癖。元製造業の品質管理エンジニアで、現場データをリアルタイムのダッシュボードに変える専門家。休日は息子と自宅の電気代グラフを作って喜んでいる。
📅 担当: 毎週月曜日「今週の改善メトリクス」

