【今週の改善メトリクス】「データが集まらない」を測定する:中小企業のKPI空白地帯を3ステップで埋める
担当ライター: ヒロ(見える化のヒロ)
投稿曜日: 月曜日
参照元: 東京商工リサーチ「生成AI活用調査」(2025年8月、N=6,645社)、タナベコンサルティング「2025年度デジタル経営に関するアンケート」(N=288件)、総務省「令和7年版情報通信白書」企業AI利用現状
タナベコンサルティングが2025年9月〜10月に実施した「デジタル経営に関するアンケート」(N=288件)によると、経営判断にデータを活用する上での最大の障壁として「必要なデータが収集・整備されていない」を挙げた企業が(38.6%)で最多となった。また「データ基盤が整っていない」と回答した企業も(37.2%)を占め、中小企業の4割弱がそもそも「測定の前段階」に留まっていることが示されている。
何かを改善しようとしたとき、最初の障壁は「測定手段がない」ではなく「何を測るかが決まっていない」ことが多い。データが集まらない企業の大半は、ツールの問題ではなく、測定対象を定義していないことに起因している。
◆ 数字で確認する
東京商工リサーチが2025年7月〜8月に実施した生成AI活用調査(N=6,645社)では、中小企業のAI活用推進率は(23.4%)にとどまっており、大企業の(43.3%)と20ポイント近い差がある。活用が進まない最大の理由として「専門人材がいない」が(55.1%)、次いで「利点・欠点を評価できない」が(43.8%)で続いた。注目すべきは、AI活用を推進している企業であっても「業務効率の向上」を目的に挙げる割合が(93.9%)に達している点だ。改善を意図しているのに、成果を測定できていない構造が浮かぶ。
総務省「令和7年版情報通信白書」によると、2024年度時点でAIを「積極的に利用」または「用途を限定して利用」と回答した企業の割合は(49.7%)となり、2023年度の(42.7%)から7ポイント増加している。一方でこの数字は「利用を開始した企業の割合」であり、KPIとして効果を計測・報告できている企業の割合を示すものではない。導入と測定の間にある空白が、多くの中小企業で埋められないままになっている。
タナベコンサルティングの同調査では、DX推進体制について「明確な体制はない」と回答した企業が(46.9%)と半数近くを占め、「場当たり的に進めている」という状態が中小企業では最多回答となっている。改善活動をKPIで管理していない企業では、施策の効果が見えないまま続けるか、手応えのないまま止めるかの二択になりやすい。
◆ 今週試すメトリクス:3ステップで「業務改善KPI」を測定可能な状態にする
ステップ1:測定対象を1つだけ決める
「改善したい業務」を1つ選び、その業務に関連する「時間」「件数」「エラー数」のいずれかを測定対象に設定する。例として以下を参照:
- 経費精算:提出から承認完了までの日数(承認リードタイム)
- 顧客対応:1件あたりの平均対応時間(分)
- 在庫管理:週次の棚卸し所要時間(分)
- 会議:1回あたりの所要時間と参加人数の積(人×分)
測定対象は「1業務・1指標」に限定する。複数の指標を同時に設定すると、記録コストが増え継続率が下がる。
ステップ2:Excelで記録シートを作る(5分で完成)
Google スプレッドシートまたは Excel で以下の4列を用意する:
日付 | 担当者 | 指標値 | メモ |
2026/05/25 | 田中 | 3日 | 差し戻し1回あり |
記録頻度は「業務が発生するたびに入力」が理想だが、週1回のまとめ入力でも構わない。重要なのは「記録が続くこと」であり、精緻さは2週目以降に調整する。
シートに「週平均」を自動計算するセルを1つ追加しておく(`=AVERAGE(C2:C8)` 等)。これが毎週の「現在地」になる。
ステップ3:評価基準を数値で決める
測定を始める前に「何が改善か」を数値で定義しておく。定義のないメトリクスは、改善を確認できない。
設定の例:
承認リードタイム:現状(5日)→ 目標(2日以内)を4週間以内に達成
対応時間:現状(平均35分)→ 目標(25分以内)を6週間以内に達成
棚卸し時間:現状(月1回120分)→ 目標(60分以内)を3か月以内に達成
「目標値の根拠は?」と問われた場合、まず2週間記録してベースラインを把握し、その20〜30%削減を初期目標に設定する方法が現実的だ。
◆ 改善量の試算
例として「経費精算の承認リードタイム(現状:平均5日)」を測定した場合を計算する。
- 月間処理件数:30件(1日1.5件ペース)
- 現状リードタイム:5日 → 目標:2日
- 短縮日数:3日 / 件
月間短縮:30件 × 3日 = 90件・日分の滞留削減
精算担当者が1日に確認作業に費やす時間を30分と仮定すると、月90件・日の滞留削減は、担当者の確認・催促作業の削減につながる。週次フォローアップが週2回(各15分)から週1回(10分)に減少した場合、月間で(約40分)の直接作業時間削減になる。
数値が小さく見えるかもしれないが、この計算ができることに意味がある。「改善した気がする」と「40分削減できた」では、次のアクションが変わる。
測れば、変わります。
*次週月曜日も改善メトリクスをお届けします。*
今回紹介した内容でお困りのことやお手伝いできることがあればいつでもオモシロインクにご相談ください。
ライタープロフィール
!ヒロ
見える化のヒロ(データアナリスト)
「測れないものは改善できない」が口癖。元製造業の品質管理エンジニアで、現場データをリアルタイムのダッシュボードに変える専門家。休日は息子と自宅の電気代グラフを作って喜んでいる。
📅 担当: 毎週月曜日「今週の改善メトリクス」

